OUR DEMOCRACY HAS BEEN HACKED

今、世界を救えるのはハッカーだった!?
常識を覆すサイバー・サスペンス「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」ってどんな作品?

文:映画ライター 浦木 巧

全米で大ヒットを記録した海外TVドラマ「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」が、DVD-BOXとなっていよいよ3月8日(水)リリース! 目的は世界を救うことか、それとも世界を破壊することか……。本作は「孤高の天才ハッカー vs 巨大利権悪徳企業」を描く、衝撃のラストが待ち受ける新たなダークヒーローの戦いだ。

ある日突然おとずれた“MR.ROBOT ”との接触から
巨大企業を陥れる計画に次第に引き込まれていく

<ストーリー>
ニューヨーク。世界最大の企業複合体“E(悪魔)コープ”を最大の顧客とするコンピュータ・セキュリティ会社“オールセーフ”で働く青年エリオット(ラミ・マレック)。彼は人付き合いが苦手だが、天才的なハッキング能力で、周囲の人々の交友関係や性的嗜好など、誰もが他人に知られたくない個人情報を集めることが趣味だった。ある夜、Eコープのサーバーが何者かにハッキングされ、エリオットは被害を最小限に食い止める。犯人からの「このまま放置しろ」というメッセージに従い、1つのファイルを残した彼に、“ミスター・ロボット”と名乗る謎の中年男(クリスチャン・スレーター)が接近する。彼は、コニー・アイランドのさびれたゲームセンターに潜む凄腕ハッカー集団“f・ソサエティ”のリーダーだった。エリオットは「仲間にならないか?」と誘われるが……。

まずは予告編をチェック!
全米で大ヒット!2016年の賞レースも席巻!
☆ゴールデン・グローブ賞/最優秀作品賞&助演男優賞受賞 ☆エミー賞/主演男優賞&楽曲賞受賞

全米を震撼させた衝撃のサイバー・サスペンスが「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」。2015年6月に全米で放送されるや瞬く間に話題を集め、全米有力批評サイト「Rotten Tomatoes」でも98%という高スコア(シーズン1・2017年2月14日現在)を叩き出した。これは日本でも大ヒットしている「ゲーム・オブ・スローンズ」の89%(シーズン1・同日現在)、「ウォーキング・デッド」の89%(シーズン1・同日現在)を大きく上回る数字。その作品力の高さがうかがえるはずだ。

 企画・製作総指揮・脚本とエピソード監督まで務めるサム・エスメイルが生み出すリアリティとスリルあふれる作品世界は、画づくりと使用楽曲のセンスも抜群。2016年開催のゴールデン・グローブ賞では、「ゲーム・オブ・スローンズ」ほか有力作品を抑えて見事に最優秀作品賞を受賞。主演男優賞(ラミ・マレック)、助演男優賞(クリスチャン・スレーター)にもノミネートを果たし、スレーターが受賞の栄誉に輝いた。さらにエミー賞では、作品賞、主演男優賞、脚本賞、キャスティング賞、楽曲賞、サウンド・ミキシング賞の6部門にノミネート。マレックの主演男優賞と楽曲賞の2部門受賞の快挙を果たした。

 その他にも、ゴッサム賞、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭など、数々の賞で次々と受賞&ノミネート。まさに“全米が認めたドラマ”と言っても過言ではないだろう。

ハッカーが国民的ヒーローに!? 全米で大ヒットした背景とは

なぜ「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」が、ここまで全米で注目を浴び、そして大ヒットしたのか。卓越した映像&音楽センスと、見る者を引き込むストーリーテリングの巧みさはもちろんだが、その大きな理由は、描かれるテーマがあまりにも現代的かつ現実的であることだ。

 「MR. ROBOT」は、凄腕のハッカー集団が、全世界の金融と経済を牛耳る巨大企業のサーバーに侵入し、同社が持つ膨大なデータを破壊して“革命”を起こそうとする姿を描くが、この「個人情報と結びついた金融データをクラッシュさせ、世界にはびこる“格差”をリセットする」という設定が、クレジット社会であるアメリカにダイレクトに響いた。クレジットカードを持つことが社会的信用につながるとして、現金を持ち歩かずコーヒー代すらカードで払うのが日常的なアメリカ。進学のための学生ローンや、住宅購入ローンを背負い、日々の支払いもカードとなれば、債務額が貯蓄を上回っている人も多数。アメリカ人の約1/3が、債務超過に陥っているというデータもあるほどだ。そんな状態の人々の前に現れた「借金を全部帳消し」することに挑むサスペンス・ドラマ。夢中にならないはずがない。

 日本はここまでのクレジット大国ではないが、若手社会人の負担となっている大学奨学金の返済や、クレジットカードの多重債務、住宅ローン負担など、負債にまつわる問題は、以前にも増してクローズアップされている。さらに、「昼は普通の会社員、夜は入手した情報を基に悪い奴らに鉄槌を下す執行人」という主人公像は、日本人が好む“仕事人”設定。コンピュータ社会の盲点を突いて社会に革命を起こす新たなダークヒーローの戦いに、グイグイと引き寄せられてしまうはずだ。

個人情報はいとも簡単に盗まれるー。
現役ハッカーもお墨つきのリアルな表現!

巨大企業のサーバーを狙うハッカーたちの攻防はスリリングだが、本作を観ていて驚かされるのが、「個人情報はこんなにも簡単に盗み出されてしまうのか?」という描写の数々だ。

 TwitterにFacebook、Instagramと、私たちは何気なく、自分たちの日常をソーシャル・ネットワークにアップしているが、それは表に表示させる画像やテキストだけではなく、自分にまつわる情報を「世界とつながっているサーバー上に保存している」ということ。凄腕のハッカーたちは難なくパスワードを解析して個人のアカウントに侵入。交友関係はおろか、誰にも知られたくない秘密まで入手してしまうのだ。

 劇中でも、ターゲットにした人物の名前や生年月日、家族や飼っている犬の名前等を事前に調査し、それらを基に何億通りものパスワードを生成するプログラムを使って、違法ログインを成功させるシーンが登場する。従来の映画やドラマのハッキング・シーンに不満を持っていたという製作クリエイターのサム・エスマイルが、リアルさを最優先して撮り上げた描写が出色。IT業界のリアルな表現は、現役ハッカーやエンジニアたちもお墨つきを与えているほどだ。

ラストのドンデン返しに衝撃&興奮!
あなたは「MR. ROBOT」の真実を見破れるか!?

天才ハッカー、エリオットが、謎の男ミスター・ロボットに誘われ、世界の仕組みを根底から覆そうとするスリルはもちろんだが、本作の随所にちりばめられた数々の伏線にも注目したい。ラスト2話で明らかになる衝撃的な真実には、多くのドンデン返し映画を観てきた映画好きですら、大きな驚きと興奮を覚えるのは間違いない。「すべてのシーンに意味があった!」と感じさせる衝撃は、もう一度最初から見直さなければという使命感すら感じさせる程だ。

 自分はいったい何者なのか。ネットに記されたあらゆる情報から逆に浮かび上がってくる姿こそが、自分の実像なのか。他者とのコミュニケーションに不安を抱え、理不尽さを持つ社会への怒りを胸に抱えた青年を主人公に、欲に駆られて悪に手を染める者、特権を維持するために、貧する者たちをないがしろにする富める者の姿が、緻密に隠された物語の仕掛けとともに描かれていく。オバマ元大統領や日本の安倍首相の映像、スティーブ・ジョブズなどカリスマ経営者の実名や、実際のソーシャル・ネットワークが登場。あらゆるタブーを恐れず名指しで切り込むエッジの利いたクールな作風が、見る者の知的好奇心を強く刺激する。

 さあ、あなたは、本作に仕込まれた恐るべき真実を見抜けるか。早くもシーズン3までの製作が決定している大ヒット・サイバー・サスペンスが、いよいよDVDとなって登場する。

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